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2018-11-17 Sat 20:45
幻水2  同盟軍にて
〈ゴクウ  フリック  ルック〉

□□□ 出立-1 □□□


 机の上の簡易ランプが薄暗く部屋を照らす。
 ゴクウは素早く旅支度を整える。ぐずぐずしている暇はない。
 フリックより渡された小袋を首にかける。竜の民を偽装するお守りだ。

『作戦はこうだ。共和国竜洞騎士団領シークの谷にて月下草の採集及び出立より60時間以内に城へ帰還。任務遂行者であるゴクウ、ルック二名は隠密行動を基本とする』
 仮面。トランの通貨をルックと分ける。
『シークの谷がある竜洞領は強力な結界があって、中と外を繋ぐ転移魔法は使えない。竜洞領に入る手段は主に三つ。空を渡る竜騎士に依頼するか、山脈を抜ける大空洞を通るか、馬鹿正直に足で山脈を越えるか。まあ、全部アウトだ。そこで竜洞領近くのカラローという街に、引退した元竜騎士がやっている運び屋がいる。マーゴって名の婆さんだ。ルック、分かるな?』
 肯定を確認して、フリックは地図を指さす。
『トランに入国してすぐに転移魔法で、この黒の森まで飛べ。ここは竜洞を含めた三つの領地の境になっていて、なにかと諍いが絶えない。魔法を使えばすぐに足がつくが、この森の中に逃げ込めば、最低限、夜明けまで追跡はない。だから森についたらすぐに〈身代わり地蔵〉をダミーに真西へ抜けてサギンという村へ行け。そこの運び屋で走竜を調達して、カラローへ。うまくゆけば昼までには着くはずだ。カラローは商業地だから、異国の人間も珍しくはない。ここからクエストに出向く冒険者に混ざってシークを目指せ。竜洞領の境を超えたら、転位魔法での移動が可能になる。何をやろうとシークの谷まで逃げ切れば、行きの鬼ごっこは終わりだ。出立は一時間後。・・・以上』
 執務室を出たルックのあとをゴクウが続く。
『時間の許す限り向こうの情報が知りたいんだけど、お願いできるかな』
『僕もそれを言おうとしてたところさ。僕はもう準備できてるから、あとで君の部屋に向かうよ』


 携帯用の食料と水、薬。 最低限の荷物を背負う。
 部屋の隅にはルックが、同じようないで立ちでゴクウの支度を待っている。
「・・・そんなわけで、竜の民ではない僕たちじゃ作戦通りにはいかない。認識が違うんだ。だけど悪く取らないでほしい。彼らは生まれながらに竜と友達で、僕たちはそうじゃない」
 ルックは少し俯いた。ルックだけが酷い問題を理解している負い目があった。
「そんなこと思わないよ。そもそも僕が言い出さなければ、もっとうまくいったはずだもの」
「いや、多分これがベストだよ。・・・彼の存在はとても大きい」
「〈彼〉も、とても頼りにしてたものね。大丈夫、覚悟はできてるよ。僕らの力は、きっとこんな時のためにある」
 ゴクウが仮面をつけると、ルックもそれに倣う。部屋を出て、二人は無言で屋上を目指す。
 扉の前には、フリックとビクトールが。そこに二人が揃ったところで外へ出た。
 夜明けが遠い月明りだけの出立。隠密作戦であるため、光は灯せない。
 見送りのビクトールが、下を見ろと手を振る。
 遠く離れたそこで、軍師が窓からこちらを見上げていた。
 気負っていたものが少し軽くなる。
「竜相手に誤魔化しは利かない。大型の竜と出くわしたら迷わず逃げろ」
「了解」
「───行くよ」
 魔法陣が粒子となって、ゴクウとルックを包み消えた。



 トラン共和国、竜洞騎士団領──シークの谷。
 別名を水晶の谷と呼ばれ、遠くから眺める分にはきらきらと輝く谷間が美しい、トラン絶景名所の一つに数えられる場所だ。〈月下草〉が採収できる唯一の場所であり、それと同時に大型の幻獣と灰竜の巣という難易度の高いクエストとして知られている。

 一瞬。空中に光の円陣が浮かび、影が二つ飛び出る。
 二つの影が音もなく降り立つと同時に、結界を解かれた森が一瞬だけ光り、すぐに静寂を取り戻した。二つは木陰にするりと身を寄せ、夜の闇に同化した。
 ルックが走り出し、ゴクウもそれに続く。急ぎ森を抜けなければならない。
 獣道をひた走り、時には枝を飛んで進む二人の身体能力は、もはや人の域を超えている。真の紋章によるものだ。互いに普段はひた隠しにしているが、同行人が同じ存在であればその必要はない。この身体能力があるからこそ、竜人の証がない分を補えるだろうという算段だ。
 ある程度、森の中を進んで〈身代わり地蔵〉を設置し、二人は再び走り出した。入国して転移魔法を使った時点で捜索の手は伸びている。クエストの難易度だけではない。いかに所在を知られず、迅速に任務を遂行できるかが今回のカギだ。
 しばらく進んだところで、ルックが足を止めた。ゴクウも前方の暗がりを睨む。
「・・・見張り? さっきの結界といい、この森、何かあるの?」
 視界では木の葉の隙間から暗がりしか覗けないが、二人の超感覚はその先にいる男を察知していた。
「・・・ここでしか採れないものがあるんだ。色んな所が利権を巡って、いつも揉めてる」
「・・・なるほどね」
「・・・近くに仲間はいないようだよ。いけるかい?」
 風を読むルックの索敵は正確だ。
「もちろん」
 ゴクウは姿勢を低くして、そっと足を進めた。

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