幻想水滸伝 ファンサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | ∧top | under∨
2013-11-11 Mon 10:22
幻水1 解放軍時代

<フリック ルック>

★★★★★★★★★★★★★★★★

「………気配がない?」
 眉間にしわを寄せ、風をまとった少年がひとり、城の屋上へふわりと降り立つ。

「おかえり。お勤めご苦労さん。そろそろだと思って待ってたよ」
 少年を出迎えたのは、青を基調とした服で身を包んだ若い戦士だ。
風を操る少年に、同盟軍が領土として得た、かつては戦場であった大地の浄化を依頼したのだ。穢れた大地をそのままにしておけば、いくら人が平和を望もうと、土地そのものが争いを呼び、血を招く。

 本来ならば神に仕える者の仕事なのだが、この少年は彼らと同じく、人ならぬものの姿を見、声を聞くことができ、その上、広範囲の穢れを祓うことができた。魔法使いというものは、大概にして世の不思議を知る者が多いが、その中でも彼は特別な存在だった。

 少年は確認するように辺りを見回した。そして舌打ちすると、すぐさま頭上に指で魔方陣を描き、呪文を唱える。風の結界魔法だ。見る者が見れば、少年から生まれた風魔法が、半球状の結界となって城を覆ったのが分かるだろう。

「相変わらず、見事だな」
 青の戦士も、魔法を使うことができる人間の一人だ。
「これが僕の仕事だからね。ちゃんと責任は果たすよ。─── あの件だけど、結論から言えば、あの場所に彼女らしき人はいなかった」
 少年は無表情ながらも、気遣うように、胸元から一輪の花を青年に渡した。
 死者に手向ける鎮魂花だ。

「………………そっか。いや、いいんだ。」
 青年フリックは、花を受け取ると、寂しげに笑った。
 フリックは大地の浄化とは別件で、恋人の弔いを少年に頼んでいたのだ。最期を看取ってやることも叶わなかった償いに、せめて魂だけでも送ってやりたかったのだ。彼女が亡くなってからずいぶん経つが、前リーダーであった者の死は混乱を招くとし、隠蔽された結果、彼女には墓標すらなかった。

「あの地下には、思いは何も残っていなかった。だから………」
 伝え聞くところでは、とても美しい人だったらしい。

「いや、いいんだ。それ以上は言わないでくれ。オデッサの思いは分かっている。ただ、彷徨う心があるならばってな」
──── 生きるか死ぬかの逃亡の途中、子供を庇って死んだ。

「力になれなくて、ごめん」
──── 亡骸は身元が判明しないよう、服を脱がし汚水に流された。

「ルックが謝る必要はないさ。おれが女々しいだけだ。悪いな、無駄足になったみたいで」
「それぐらい、別に構わないよ」
 ──── 彼女の死を知った当時の、彼の悲しみ、苦しみは計り知れない。

「だけど、これで踏ん切りがついたよ。弔いなんかなくとも、オデッサの魂は死者の国へ行き着いたんだろう」
 フリックは受け取った花を、屋上から風に流した。落ちることなく風に舞う花を前に、片手を胸に当て、黙祷する。
 ルックは傍らで男の静かな横顔を見つめ、ロウならば──そう言いかけて、口をつぐんだ。

 死者は、ロウの持つ紋章の領域だ。ロウであれば、フリックの望む以上のことが叶う可能性が高い。しかしその力は生あるものには死を。死する者には生を与える。
 つまり彼女の死には、少なからずロウの紋章が影響していたはずだ。

  オデッサが死ぬまでの数日を共にし、そして最期を看取ったのもロウだ。志しを継いだのも。
 良くも悪くも、彼女はロウの生きる指針となってしまった。彼女の魂が輪廻の輪に戻ったのならばいいが、ソウルイーターの宿主に望まれ、紋章に囚われたのであれば、フリックに対しかける言葉が出てこない。
 なによりロウの持つ紋章が何を司るのか、フリックは知らないはずだ。宿主であるロウですら、自覚がないのだから。

「彼女の魂が心安らかでありますよう」
 せめてもとルックが、癒しの効果がある安らぎの風でフリックを包んだ。
「お前ね、気持ちいいけど、おれにやっても」
 ふわりと温かな風に包まれ、フリックは困り顔だ。望みは彼女の、死の国での安寧だ。

「死者の望むことをするのが僕の弔い方だ。彼女に会えたら、きっと頼まれたはずだ。だからこれでいいんだよ」
「………そうか? あぁ、そうかもな。おれはいつでも心配をかけてたから」
 フリックは寂しげに呟いた。小さな笑み。
「泣けば? 大丈夫、誰にも言わないよ」
「生意気言うな。───── もうさんざん泣いたさ」

 そうして風が吹き止んで、穏やかな空気がその場を満たしたのも一時のこと。
「ところで、ロウはどこかへ出かけたのかい?」
 実はルックは、どこへともなく勝手に出かけるリーダーの監視もしていた。
 というよりも、これが最も優先すべき仕事だ。

「ロウ? いや、今日はあいつは出かける予定はないはずだけど」
 だが、悪い予感。フリックの笑顔が引きつる。

「ふうん。あいつ、城のどこにもいないよ」
「─── 嘘だろ?」
 無表情な少年の、とどめの爆弾発言に、フリックはせっかく癒しの風を受けたにも拘らず、頭と胃を押さえるのだった。

スポンサーサイト
別窓 | 1時代のあれこれ | コメント:0 | トラックバック:0 | ∧top | under∨
<<テッド坊祭(10のお題) -0- | ひねくれ余市のひとり言 | 1 -私が一番きれイだったとき->>
  • この記事のコメント
∧top | under∨
コメントの投稿

管理者だけに閲覧
 

  • この記事のトラックバック
トラックバックURL

∧top | under∨
| ひねくれ余市のひとり言 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。