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2013-11-20 Wed 15:14
幻水2  同盟軍にて
〈2主 ナナミ 坊 フリック〉

□□□ 日常 □□□



 …うるさい。
 気怠い微睡みの中、意思がはっきりと言葉を持ったのはそれが最初だった。
 聞こえてくるのは訓練だろう剣を打ち合う音と誰かの口論、それに向けての野次、罵倒。
 まだ睡魔は遠のいているわけでもないのだが、どうしてもそれが耳に障る。
 そうして目覚めて早々、ゴクウは機嫌が悪かった。
 普段の穏やかさが嘘のように、目つきも鋭く荒々しい。
 普段は人当たりがよく、優等生前としているゴクウだが、その半面、寝起きだけはすこぶる凶悪だった。

 騒ぎの原因は分かっている。
 トランの英雄を向かえてのちに、すでに日常となりつつある、ロウとフリックのいがみ合いだった。
 ふたりとも普段は温厚なのだが、お互いが顔を合わせると、暴言失言当たり前の、はた迷惑な大喧嘩をやらかしていた。
 不仲は昔かららしく、これで解放軍時代にはツートップとして軍をうまくまとめていたというのだから信じられない。
 戦争に勝てたことが不思議だ。

 トランの英雄を招いてずいぶんと経ったが、同盟軍は揺れに揺れていた。
 ロウに対する嫌がらせは相変わらずで、それが原因でトラン兵と同盟国兵との不和を招いた。
 最近では乱闘騒ぎまで起こる始末だ。

 なぜ揉め事の火種を連れてきたのかと軍幹部たちは嫌味を言う。
 ゴクウとロウを比べてみては、ため息をつく。今では味方は軍師だけだ。
 しかしゴクウがトランの英雄を招いて、益があったのも事実だ。

 ゴクウは知っていた。
 トラン共和国大統領レパントにとって、トラン共和国の国民にとって、ロウ・マクドールという存在がどんなものか。
 加えてあのカリスマ性。彼は何をするわけでもないのに、人の心を動かすのだ。
 彼が姿を見せるだけで、場の空気が変わる。
 彼の命令に、トラン兵は皆、胸を躍らせる。彼らは英雄の命令ならば、死すら厭わないだろう。

 訓練がどうという次元ではない。真に統率された軍隊というものがどういうものか、ゴクウは初めて知った。
 それは烏合の衆である同盟軍とはまるで違う。
 上に立つ人間であれば、誰もが理想とする完成された軍隊。
 トランの英雄だからこそ成せることであり、これが味方につくのだから、多少の揉め事には目をつむってもらいたいところだ。

 ゴクウは寝台を抜け出すと、窓の外を見た。
 二人は、今回は兵士の訓練をしながら罵りあっている。
 目立つ広場でしごかれているのは、皆トラン兵だ。
 つまりこれは、今回起こった乱闘騒ぎの不始末に対する、トランの英雄自らの見せしめの制裁だろう。

 トランの英雄の名誉のための乱闘だったのだろうが、規律を重んじる彼がそれを許すはずもない、といったところか。
 仲はともかく、かつての片腕であるフリックも片棒を担いでいるらしい。

 きちんと公私は分けているのかと納得しかけ、それでも二人がそれぞれ違う相手を情け容赦なく打ちながら、お互いを罵り合っているのには、やはり理解が及ばなかった。いい大人二人が、少しは分別というものがないのだろうか。

 そしてふと気付く。
 フリックは相手の剣をお愛想に一、二度受けてから叩き伏せているが、ロウは相手を次々と薙ぎ倒している。実力から考えておかしくはないが、どうにも引っかかる。見ようによっては余裕がない。
 案外、ロウは体力がないのかもしれない。
 というより、隠遁生活による衰えか。
 もっとよく観察してみようかと思ったところで、ノックもなく扉が開いた。

「おはよう。ゴクウ、起きてる? って起きてるんだ。珍しいね」
 言うまでもなくナナミだ。
「おはよう。今日、外がうるさいね」
「外? あ、マクドールさん見てたんだ」
 とことこと、ナナミも隣に並び外を見た。

「見てたというか…」
 粗を探していたというか。
「うん。分かるよ。ちょっと気になるよね。最近、元気がないみたいだもの。皆、心配してるんだよね」
 ゴクウに都合よく解釈してくれたらしい。
「元気がない? ていうか、皆?」
「マクドールさん、女の子達からすごく人気あるんだよ」
「なるほど。ナナミはどうなの?」
「ん? もちろん、心配だよ。マクドールさん、素敵だし優しいもの」
「ふーん」

 ゴクウは窓枠に両手をついて、ナナミを腕の中に囲った。そのままのし掛かり、ナナミはさも迷惑げに振り返る。
「もう。なに?」
「何もないよ。あれ、ナナミ、ちょっと痩せた?」
 言いつつ、ナナミの腰回りをふにふにと摘まんで、
「なんだ、太ったのか」
「馬鹿! 最低!」
 怒ったナナミが離れようと抗うが、ゴクウはふざけて、腕に力を込めて逃さない。ナナミはゴクウの腕の中で、いよいよ本気で暴れ出した。
「もう!  いい加減にしないと、おねえちゃん怒るよ!」
「もう怒ってるじゃん」

 窓際の攻防が、下にいるフリックとロウの視界の端にも映ったようで。
 丁度、一通りのしごきが終わっての休憩中、ロウがそれとなしに口を開く。
「仲のいい姉弟だな」
「ん? ──あぁ、あれはお前に見せつけてるのさ」
「おれに? なぜ?」
 ロウは、むっと眉を寄せた。フリックは少し呆れた。
「お前がモテるってことだろ。お坊ちゃん」



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