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2013-12-24 Tue 12:57
幻水1  坊の少年時代

〈オリキャラ テッド 坊〉

涙→雨→食卓(いまここ)
この順番で続き物になっています。

★★★★★★★★★★★★★★★


「あのクロガネが、人を乗せた…」
 チャーリーはとうとう追いつけずに、馬が走り去る方向を遠く眺めた。
 正しくは、オディアルが馬にしがみついているだけだ。決して乗りこなしてはいない。いないのだが、チャーリーは驚きを隠せない。馬が本気になれば、一分と持たず、人などすぐに振り落とすからだ。だが、それがどうだ。
 乗り手が悪いだけで、馬は馬の仕事をきちんとこなして走っていたではないか。
 最も、馬に馴染みの薄いオディアルには分かるまいが。

 遠く森の中へ走り去るクロガネに、チャーリーはその行き先の見当がついた。馬も人も行きたい先はきっと同じ所だ。彼らが踏み入ったあの森が何よりの証拠。
 チャーリーは馬から下りた。近くの小川で馬に水を与えながら、背を撫でてやる。

「さて。任すが良いか、迎えに行くほうが良いか。お前はどう思う?」
 馬に尋ねる。馬はちらりとチャーリーを見ただけだ。 
「そうだよなぁ。人の都合を聞かれても困るよなぁ」
 チャーリーは馬を手近な木に留めると、ふむと顎を撫でた。
 
 オディアルとクロガネが消えた森は、マクドール家が所有する森だ。
 森の奥には森番の、不思議な少年が一人で暮らしている。

 人に対して不思議とは妙な表現でチャーリーも説明は難しいのだが、一つ上げるとすれば、少年の動物に好かれる体質のせいだろうか。
 彼曰く「おれを嫌う獣はいない」の言葉通り、馬番のチャーリーでも手を焼く暴れ馬を、通りがかりの彼がぴたりと大人しくさせたこともある。どんな魔法だと疑うほどに、そしてそれは動物に留まらず人間相手も同様で、彼を悪く言う者はいない。
 懐かしいというか、逢いたかったというか。なぜかそういった類いの気持ちが、少年を前にすると湧いてくるのだ。恋愛感情ほど熱くなく、けれど深い親愛の情が胸に広がるというか。
 だからきっとオディアルもクロガネも、彼の所で間違いない。

 チャーリーも執事長とオディアルの確執は知っていた。それだけに、使用人たちの噂話を小耳にはさんではオディアルを気にかけていた。チャーリーは賢く優しいオディアルが好きだった。
 さて、ここで迎えに行かなければオディアルは幸せになれるだろうか。けれど迎えがなければ、オディアルはどう思うだろうか。いや、迎えに行っても喜ぶまい。
 どちらにせよテオが戻る前に連れ帰らなければならないのだが、チャーリーにはどうにも気が引ける。オディアルにとってマクドール家は針のムシロだ。

 うぅむと考えて、ふと金髪の間抜けな従者が頭に浮かんだ。この問題は、母親のごとくオディアルに口うるさく付きまとっているあの従者の仕事ではないか。であれば、チャーリーの仕事は、そのうち戻ってくるだろうクロガネを待って連れ帰るのみだ。
 帰り道がてら、鉢合わせになるはずの従者には、その時に場所を伝えればいい。きっとあの間抜けも、探し回った挙句に、この森へ来るに違いないのだから。



★★★★★★★★★★★★★★★



『うあぁぁぁあぁぁ────!』
「ん?」
 テッドは洗濯をしている手を止め、顔を上げた。しばらく天井を見上げて、考え込むように唸ってから、また洗濯を再開した。
 十分に絞って、まだ泣き声が聞こえることにもお構いなく、木の根の階段を上る。床に座り込み、泣きじゃくる少年の隣を遠慮なく横切り、洗濯物を干す。鍋を下して、湯を沸かすために別の鍋を火にかけた。しばらくして沸騰したそれを、カップに入れて椅子に座る。そしてまた蔓の籠を編み始めた。

 きしきしと蔓がしなる。
 ロウの嗚咽が段々と小さくなる。
 少年がほどよく落ち着いただろうところで、火にかけた鍋から、少年の分の湯をカップに注ぐ。
「のど乾いたろ? ただの湯だけど、悪くないぞ。まあ、座れよ」

 普段通りのテッドの声。ロウはのろのろと椅子に座った。目の前に置かれたカップを取る。
「熱いから気をつけろよ」
 言われた通り、ゆっくりと啜る。冷えた体にじんわりと熱が伝わる。
「…うまい」
「だろ? 茶葉なんてなくても十分! 要は入れる人間の愛が大事なのさ。それ飲んだら、飯にしよう。お前、来るタイミングいいよ。今日のスープは自信作なんだ」
 テッドはにこりと笑いかけた。スープの鍋を火にくべて、かき回す。

 ゆっくりと時間が流れる。かたかたと風で扉が鳴る。
 熱い湯を、冷ましながら少しずつ口にする。
 部屋の脇によけた作りかけの蔓の籠。
 働き者の彼の邪魔をしている。
 鍋の前に立つ友の後姿を見ながら、ロウはまた涙をこぼした。

「…ごめん。迷惑かけた。だけど、他に行く場所もなくて……」
「うん」
「屋敷にいたくなくて…」
「うん」
「村に帰りたくて…」
「うん」
「あいつがどうしても嫌で…」
「うん」
「…グレミオを困らせたくなかったのに……」
「うん」

 テッドは頷く。
 突然の訪問を問うこともなく、ただ受け入れてくれる優しさが身に染みる。己の存在すら否定されるばかりの日常で、テッドの優しさはまた涙腺を緩ませた。
 ロウは言葉を詰まらせ、目の前に差し出された皿に、もはや礼すら言えずに頭を下げるのみだ。
 焼いた芋と出来立てのスープの、質素だが温かな食事が目の前に並ぶ。

 祈りを捧げて、テッド。
「さ、食べよう」
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