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2014-02-01 Sat 18:49
幻水1  坊の少年時代
〈テッド 坊〉

涙→雨→食卓→喧嘩(いまここ)
この順番で続き物になっています。

20014.2.1
★★★★★★★★★★★★★★★


「…おれはさ、あの時、コブールの村で別れるより、今こうして一緒に飯を食えて嬉しいよ」
 親を失った子供が一人で生きるということが、どういうことか。
「今、こうして目の前にいることが、とても嬉しい」
 スプーンを握ったまま、テッドが言う。

「おれと出会った頃は、痩せて骨ばっか目立ってたチビのお前が、貴族に拾われて立派な服を着て、食うに困らない生活をしていることがすごく嬉しい」
 テッドはゆっくりと語る。
「気付いてるか? ガリガリなのはあまり変わらないけど、背はちゃんと伸びてる。何もできないって泣いてたあの頃より、きっと力だって強くなってる」
 応答はないが、ロウの嗚咽は止まった。
「おれは、お前をここに連れてきたことが、良かったかどうか分からない。だけどおれは、ロウがこうして生きていることが嬉しいんだ」
 ロウが顔を上げた。泣き笑い。

「…テッド、母さんみたいだ」
「そうか? ── やっと笑ったな」
 テッドもにっと笑った。

「さ、まずは食べよう。おれ、腹へっちゃったよ」
「ごめん」
 ロウは慌ててスプーンを持った。
 持ったが、胸がいっぱいでなんとやらで、手が動かない。それを見たテッドが、
「無理してでも食え! 食わなきゃ追い出すぞ!」
 言われた方は、すぐにスープに手を付ける。主導権は常にテッドだ。

「な? うまいだろ。オディアル」
「違う。おれの名前はロウだ」
「いつもの勢いが出てきたじゃないか」
「うるさい」
「いいから黙って食え。お坊ちゃん。ほら、これも」
「あ! もう!」
 いつもの軽口に、ロウの心も浮上していく。

 そうこうして食事が終わり、片付けを言いつけられたロウがかちゃかちゃと食器を洗う。
 テッドはまた蔓の籠を編みながら、
「ミハエルさんがさ、お前にきつく当たる理由、考えたことあるか?」

 眉を寄せたロウは洗い終わった食器を拭きながら、
「あるよ。あいつは由緒あるマクドール家に、おれみたいな孤児は邪魔だって考えてる。だから追い出そうとするし、おれだってなりたくて貴族になったわけじゃない」
「ロウは働きに来たんだもんな。そりゃ、納得はいかないよな。だけどさ、テオ様は息子だって認めてるんだろ?」
「だから話がややこしいんじゃないか。養子をとりたいなら、同じ貴族様から迎えればよかったんだ。おれみたいな…」
「『みたいな』は禁止。自分に卑屈になるな」

「………」
 俯いたロウに、テッドは苦笑して籠を置いた。
「ちょっと言い方が悪かったな。さっきのはロウを否定したわけじゃない」
「…テッドはそうでも、あいつらは違う。あいつらにとって、おれは必要のない人間なんだ」
「あいつらが必要としてないからって、ロウまで自分をそう思っちゃ駄目だ。なあ、こっち来てみ?──ほら、泣くなよ」
「…だけどっ」
 いよいよ泣きじゃくる少年に、たまらずテッドは抱きしめる。

「いらない人間なんていない。生まれや育ちなんて関係ないんだ。ロウはロウだ」
「でもっ! おれはっ! ひとり、だっ…!」
 ロウの脳裏に、屋敷での辛い出来事が次々と浮かぶ。
「一人じゃない。それはロウが気付いてないだけさ。ロウのことを心から心配してくれる人は、絶対にいる。ロウをここまで運んでくれた馬だってそうさ」
「そんなの嘘だっ!」
「嘘なもんか。馬は人の心が分かるんだよ。あとでクロガネに礼を言っとけよ?」

 テッドは何度もロウの背中を撫でる。
「大丈夫。おれが側にいるよ。ミハエルのクソ爺の言葉なんて気にするな」
「だけどあいつは執事長だから…」
「うん。そうだな、敵は多いよな。そこが問題だ。─── 外、見てみ?」
「外?」
 ロウはきょとんと顔を上げた。窓に目を向ける。

「──グレミオ」
 そこには森の木々の間で、馬から下りて、小屋を見上げる金髪の男の姿があった。
「もう分かるだろ?」
「─違う。だってあいつは、テオ様の夕餉の支度があるのに…」
「でも、そこにいる」
 雨に打たれて、風に震えながら。

「なんでっ。グレミオだって、いつもおれに呆れてばかりで……」
「じゃあ、本人に聞いてみ?」
 テッドは優しく諭す。
「大丈夫。グレミオさんはお前の味方だ。おれが嘘を言ったことがあるか?」
「逃げたおれを、連れ戻しに来ただけだ!」
「ロウ、勇気を出すんだ」
 テッドはぐっとロウの両肩を掴んだ。
「信じるんだ。グレミオさんが駄目なら、おれの言葉を信じろ。───いいのか? グレミオさん、風邪引いちゃうぞ?」
「!」
 ばたん! と、来た時と同じく乱暴に扉を開けて、ロウは外へ出た。

 窓から見えるのは、泣きながら走っていく少年と、同じく泣きながら両手を広げてそれを迎える金髪の男。
「─やれやれ。世話の焼ける小僧だ」
 と、テッドは悪態をつきながらも、穏やかな眼差しでそれを眺めるのだった。
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