幻想水滸伝 ファンサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | ∧top | under∨
2014-02-02 Sun 17:18
幻水1  坊の少年時代
〈テッド 4様 坊〉

20014.2.2
★★★★★★★★★★★★★★★


「─海?」
 目の前に広がる二色の青。
 気が付けば、テッドは船の上にいた。
 生臭い潮の匂いと、空を舞うカモメたち。遠く去りゆくのは、名前も忘れた懐かしき港町。

「おい、ぼーっとするな! 高波が来るぞ!」
 誰かに背中を叩かれて、慌てて何かに縋り付こうとしたが、時遅し。
 大きな揺れに、見事に転がって海に投げ出された。

 見知った面々の引きつった顔を一瞬だけ見る。
 懐かしいと思うのも束の間、ざばん、と沈んで息苦しさにもがいた。
 一度は海面に浮きあがるも、ままならない潮の流れに焦り、足がつって、またしても沈む。
 縄をくくりつけた丸太を投げてよこした船員が叫んだ。
「まずい! あいつ溺れた!」
 
 テッドは薄れゆく意識にもがくことを止めたが、なぜか視点が、海に沈む自分の体を眺めるほうへ切り替わる。
 なるほどこのまま死ぬのかと、沈みゆく己を眺めていると、すぐに助けが現れる。
 男に抱えられ、そして暗転。

 次に気が付けば、自分を助けた男の顔が目の前にあった。
 多分に船の上。
 横たわるテッドを、鮮やかな青の瞳が真剣に見つめる。

 男の髪から、テッドの頬に水滴が落ちる。テッドは、やっと男の名前を思い出した。
「ラ、ズロ…?」
「この馬鹿!」
 ラズロに怒鳴りつけられ、そしてテッドは目を覚ました。

「…………」
 天井を見つめる。木だ。聞こえてくるのも、スズメの鳴き声。
 ゆっくりと頭が覚醒する。
 ここはマクドール家の屋敷の一角。
 この屋敷の傲慢な若き後継者に、半ば無理矢理連れてこられ、与えられたテッド専用の部屋だ。

 激動の青い夢と、穏やかな朝の落差に呆然とする。
 若き後継者もとい、ここの倅にせがまれて、昨日、海の話をしたせいだろう。
 今はもう遠い過去の出来事。
 懐かしき海。
 苦楽を共にした、愛すべき戦友たち。

 テッドの長い人生の中で、今も色を残す記憶の一欠片。
 しかし覚醒が進むにつれ、夢の内容がぼやける。

「えっと…名前……。確か…」
 青い瞳が印象的だった。双剣を扱い、自信に満ちた男だった。
「ら…ら……そうだ、ラズロだ」
 目覚めたのは数秒前なのに、もう顔も思い出せない。
 
 顔は思い出せないが、その少年の背負っていた背景は覚えていた。
 重い定めを背負った少年だった。
 霧の船から出て来たばかりのテッドは、久しぶりの俗世に慣れることに必死で、当時はその少年のことを気に掛けてやる余裕などなかった。
 彼がテッドにしてくれたように、テッドは彼に心を添わせてやれなかった。
 
 そしてふと思い至る。
 その時の後悔を、ここの倅に向けているのではなかろうか。
 
 偲ぶ相手の顔も覚えていないことに、僅かに寂しさが募った。
 だがテッドは、そのことを悲しんではいなかった。

「次はちゃんと支えてやるよ。だから…」
 起き上がって、祈りを捧げる。
「ラズロの今生が、幸せなものであるよう─」

 とんとんと、扉を叩く音。
「テッド、おは──」
 ロウの目に、額の前で手を組み、祈りを捧げる親友が映る。
 テッドにとってそれが特別な行為であることを知っているロウは、じっと待った。

「─おはよう、ロウ」
 やがて顔を上げたテッドが、ロウに笑顔を向ける。
 やっと近づくことを許された少年は、感心しながら言った。
「本当にテッドは信心深いなぁ」
スポンサーサイト
別窓 | テッド坊祭(10のお題) | コメント:0 | トラックバック:0 | ∧top | under∨
<<4様の名前が決まりました。 | ひねくれ余市のひとり言 | わお☆ひさびさの更新です☆>>
  • この記事のコメント
∧top | under∨
コメントの投稿

管理者だけに閲覧
 

  • この記事のトラックバック
トラックバックURL

∧top | under∨
| ひねくれ余市のひとり言 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。