幻想水滸伝 ファンサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | ∧top | under∨
2014-02-11 Tue 20:05
幻水1  坊の少年時代

〈シーナ レパント テッド〉
中途半端なんですが、「釣り」はこれで切ります。
2014.2.14

★★★★★★★★★★★★★★★


「あいつ、確か…」
 帝都に行く途中。
 父親の商いの取引についてきていたシーナは、馬を止めた。
 視線の先には、少し離れた川べりで釣り糸を垂れる少年。
 その青い服と手入れの足りない枯れ草色の頭には見覚えがある。

「おーい!」
 呼びかけると、振り向いた。
「お前、オディアルの連れだろー? 今から帝都に行くんだけど、乗せてやろうかー?」
 相手はあからさまに眉を寄せた。意外な反応だ。

「おい、どうした?」
 少し先で馬を止めた父親が、シーナに声をかけた。
 息子の視線の先を見て、馬を寄せる。
「彼がどうかしたのか?」
「あー…いや。おれが通ってた学舎に、オディアル・マクドールがいただろ? あいつ、オディアルの連れ。帝都に行くんなら、後ろに乗せてやろうと思って」

「連れ? 彼が?」
 レパントは再度、少年を見た。
 平民の少年だ。人目を引く容姿でもなければ、良い服を着ているわけでもない。
 どこからどう見てもその辺によくいるような子供だ。それも、こんな辺鄙な場所にロバも連れずにひとりでいるあたり、かなり貧乏な部類だ。

 マクドール家といえば、赤月帝国五将軍に名を連ねる大貴族だ。
 風の噂で系譜から養子を迎えたという聞いたことはあるが、その御曹司様とこの少年の、どこをどう繋げれば交友があるのか。天と地ほどの身分差は、そもそも生活圏から違うだろうに。

「親父、信じてないだろ? だけど本当の話だから。おーい!」
 父の戸惑いなど構わずにシーナは呼びかける。しかし。
「人違いですー! おれに構わず、行ってくださーい! お気遣いありがとうございましたー!」
 らしい。レパントは息子の顔を見た。

「人違いらしいぞ?」
「んなわけあるかっての。行きたくないから、嘘ついただけさ。あいつはオディアルのことを迷惑がってるから。今、確信した」
「は?」
 更に耳を疑う。

「親父、先に行っといて。グレッグミンスターはもう目と鼻の先だし、宿はマリーさんとこでいいんだろ? おれはあいつを土産に、ちょっとオディアルのとこに行ってくるよ」
「おいおい」
 取引の荷は小さなもので、レパントが直接持っている。大切な取引相手の急ぎの品かつ、腕に覚えがあるからこその二人旅で、いずれ家業を継ぐ息子の社会勉強のつもりでもあったのだが。
「向こうでくれぐれも粗相はするなよ」
「あいよ!」
 丘を駆けていく息子を見送り、仕方なくレパントはひとり帝都に向かった。

 シーナは少年のそばまで来ると、
「何が人違いだ。立てよ」
 馬上から威圧的に言う。仕立ての良い衣服といい、尊大な態度といい、それなりの身分なのだろう少年に、テッドは礼儀を正した。

「怖いなぁ。初対面じゃないですか」
「いーや、違うね。話すのは初めてだけど、何度か会ってる。オディアルから、お前の話はよく聞くんだ。テッド」
「…あの馬鹿」
 観念したのか、テッドはぼそりと悪態をついた。

「見逃してください。オディアル様のことを知ってるのなら、分かるでしょう? 僕みたいな人間がそばにいると、あの方の評判が下がるんですよ」
「敬語は使わないでいい。オディアルにタメ口なのに、ただの商人の息子に敬語じゃおかしいだろ。それじゃあいつの格が下がるって話だ」
「…人前じゃ敬語使ってんよ」
 テッドは苦笑いを浮かべた。

「おれ、今からオディアルの屋敷にいくんだ。お前を土産にするから来いよ」
「嫌だ。何度も言わせんな」
 言うが、テッドは背を向けて釣り具を片付けだした。

「来るんじゃないか」
「違う。もう釣りにならないから、うちに帰るんだ」
「お前、おれに逆らうのか?」
「オディアルがおれの弟分なのに、お前に従う義理はない。それこそ、あいつの格が下がるってもんだろ」
「まあ、そういう話になるよな」
 今度はシーナが苦笑いだ。

 敬語をやめさせたのはシーナだが、だからとてこの少年の肝の座りよう。
 身分の違いに気圧されているわけでなく、媚びる感もない。
 むしろ圧されているのはこっちで、疎んじられている雰囲気すらある。

「虎の威を借る狐か?」
「下らない。親の七光りって言葉は知ってるかい? お坊ちゃん」
 どうも一筋縄ではいかないようだ。
 シーナは考えを改め、馬から下りた。
 幼いころから人に頭を下げられることが当たり前で育ったシーナにとって、この反応は新鮮だ。

「そうツンケンするなよ。おれ、お前に興味が出てきたわ。ちょっと話そうぜ」
「断る。これ以上、面倒な知り合いを増やしたくない」
「そういうなって。おれ、シーナって言うんだ。よろしくな」
 疎ましげなテッドの視線をものともせず、強引に握手を交わし、
「そういうわけだから ──行こっか」
「は?」
 テッドをひょいと馬に担がせた。

「足かけて」
「おい、何を…」
 テッドは降りようとするも、後ろに乗ったシーナがさっさと馬を動かしたので機会を失う。
「お前、小さい上に軽すぎ。ちゃんと食べてんの?」
「おろせ!」
「『お・ろ・し・て』タメ口オッケーだけど、そこはお願いしてよ。テッドちゃん」
「おれの釣竿! 弓も!」
「あとでもっといいの買ってやるよ」
「ふざけんな!」
「まあまあ」

「もういい、お前には頼まない。──リタ」
 テッドは馬の首を撫でた。そして。
「下りたいんだ。止まって」
「─え?」 
 なんと馬が歩みを止めた。

 シーナが呆気にとられている隙に、テッドはするりと下りる。
「いい子だ。そのままこいつを都まで乗せてってくれ」
「は? えっ…おい、リタ!」
 リタとは馬の名前だ。手綱を握っているのはシーナのはずなのに、馬がテッドの頼みをきいて歩み出す。

「お前、なんでこいつの名前…リタ、止まれ!」
「リタ、走れ!」
「うわ!」
「ざまあみろ。あいつによろしくー」
 にやりと手を振る少年を尻目に、シーナは走り出したリタにしがみ付くのだった。
スポンサーサイト
別窓 | テッド坊祭(10のお題) | コメント:0 | トラックバック:0 | ∧top | under∨
<<1.夢 -テッド坊祭(10のお題)- | ひねくれ余市のひとり言 | 拍手をいただきました!!!!!>>
  • この記事のコメント
∧top | under∨
コメントの投稿

管理者だけに閲覧
 

  • この記事のトラックバック
トラックバックURL

∧top | under∨
| ひねくれ余市のひとり言 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。