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2014-04-24 Thu 15:34
幻水4 船室にて

〈4主  テッド〉
2014.4.24

★★★★★★★★★★★★★★★



「いっつ!」
 後ろ手に縄で縛られたテッドは、乱暴に寝台へ転がされた。 
 真夜中、テッドの部屋を突然訪ねてきた船長による暴挙だ。

 静かに開いた扉に目を覚ますと、ラズロがいた。何かあったかと問うが答えはなく、彼が手にしていた縄が目に入り、テッドははっきりと覚醒した。
 この船で何か問題を起した覚えはないが、追われる身故に寝起きだろうと意識の切り替えは早い。

 逃走の行動に移るまでは早かったが、悲しいかな、テッドは男にしてはひ弱な部類だ。この年で荒ぶる海の猛者たちを束ねる男を相手に、それが成功するはずもなかった。

 体格、対術ともにかなう相手ではなく、いとも簡単に取り押さえられる。ならば魔法でどうにかすればいい話なのだが、封紋の縄で縛られているらしく、左手に宿した紋章が発動しない。
 己に根付くソウルイーターならば心に念じるだけで済む話だが、ここは海上でこの男は船長だ。半身の行使までには躊躇いがあった。

 ラズロ以外に、夜勤で出ている隣室の人間を含め、周囲に人の気配はない。というか、この場を凌いだところで、海の上だ。
 成り行きで霧の船から、この男の船に乗り込んだ。大望を抱くこの男のために、数度あった陸へ上がる機会を捨てて、ともに航海し続けたというのに。裏切りには慣れているが、彼を信じた己への後悔は果てしなく、それがまた焦りを生む。

「離せ!」
 男の返事はない。
 テッドは抗うも、手際よく服を脱がされ始める。
 巷(ちまた)で流行っているという幻覚薬に、テッドが手を染めたわけでもなければ、小遣い稼ぎに情報を売ったわけでもない。そもそも乗務違反を犯した覚えは全くない。

 ということは十中八九、紋章がらみだ。人目を忍んだ真夜中、周囲に人を配置せず、実行役がこの男ひとりきりというのも、ソウルイーターを考慮しての人選であり、作戦なのかもしれない。皮膚に直接、印を刻まれ魔力そのものを封じられれば、いかな真の紋章の宿主といえど、破るのに時間がかかる。

 
 先日、船で見た罪人たちの取り調べが頭をよぎる。衣服を全て脱がされ、体の中まで調べられていた。同じような辱めをこれから受けなければならないのか。
 ぞわりと鳥肌が首筋を撫でた。

 手首を縛られているため、全てを剥ぎ取られることはないが、すでに半裸の状態だ。
 羞恥と焦り、そして怒り。男に対する覚悟がテッドの中で形を成してくる。


「『ラズロ』」
 男の耳元で『力』を込めて名を囁く。男は手を止めた。
「お前はソウルイーターを奪いに来たのか?」
 確認は最後の情けだ。これから死せる傀儡に変えるのだから。
 
 だが茫洋とした表情を浮かべた瞬きの僕(しもべ)の答えは、
「違うよ、ヤリたいだけ」
 そして己を取り戻したラズロは、行動を再開した。
 テッドは目が点になった。

「ヤリタイ?」
「ごめん」
「ごめんて! うわ!」
 下半身の服を剥ぎ取られて、それはもはや聞くまでもない。
 大きな大きな勘違い。見当違いもいいとこだ。
 今更このシチュエーションで何をどう捉えるとそっちの方向に思考が向いたのか、我ながらおかしな話だ。だが、ほっと安心する暇もない。

 さきほどとは全く違った意味で焦ったテッドは、
「だったら他を当たれ!」
 大声を出さないまでも、なんとか説得を試みる。しかし。
「他があるなら、ここにはこない」
 ラズロの手が尻を掴む。
 現実味が増し、テッドは青くなった。貞操の危機だ。

「おれは男…ぅあっ!」
 秘所を探られ、強引に指を差し込まれる。
 痛みと生理的嫌悪感にテッドは暴れて蹴りを繰り出すも、やはり難なく取り押さえられる。
「さすがにきついな」
「当たり前だろ! おれは女じゃ…ぁぐっ!」
 口に指を突っ込まれた。
 唾液を絡み取ろうと口内を蹂躙する指を、テッドは噛み切ってやろうとするも、寸でのところで指を引き抜かれて、また後孔に指を差し入れられる。

「あぁ、入った入った」
「いっ! いた! お前は馬鹿か!」
 なんとも言えない感触にもはや鳥肌しか立たない。

「あんまり騒ぐなよ。人が来るから」
 見られたくないだろ?
「だったらやめろよ!」
 それはお互い様なはず。
「やることやったら、すぐ帰る」
「おまっ!」
 最低だ。

 テッドは心の奥底の蓋を開けた。
 その体から闇が滲み出る。ソウルイーターがテッドの怒りに呼応する。
 ラズロはぎくりと手を止めた。

 夜の暗がりよりもなお濃い真黒の闇が、テッドの胸の上に集まる。
 ラズロはとっさに左手に魔力を込めるも、闇が凝縮され、小さな人型となったそれを見た途端、ラズロの心臓が大きく跳ねた。

 髪も目も鼻も口もない、手のひらほどの大きさしかない、黒い人形のような何か。
 だがラズロは、指の先まで動きが止まる。
 『ソウルイーター』という、彼の紋章の名前が瞬時に頭に浮かぶ。

 心臓が早鐘を打つ。
 毛穴という毛穴から、どっと汗が吹き出る。
 目を離せば死ぬ。動けば死ぬ。
 喋れば死ぬ。触れれば死ぬ。
 何もしなくとも、もうすぐ死ぬ。
 理屈も道理も何もない。絶対的な恐怖が心を占める。

「ヤメルカ?」
 音が聞こえた。

 ヤメルカ。ヤメルカ? なんだ? 言葉だ。この声はテッドだ。そうだ、テッドに夜這いをかけて…。ラズロの思考力が、徐々に戻ってくる。
「やっ…やめ…!」
 確認を取られるまでもないのに、唇が戦慄き、言葉にならない。
 だが思いは通じたらしく、黒人形はラズロに背を向けると、とことことテッドの首筋に消えた。ほどなくして両手の自由を得たテッドが、
「戻れ」
 すると黒人形はまたテッドの上に現れると、吸い込まれるように彼の右手に消えた。

 ラズロは茫然自失の体で、瞬きすら忘れその様を見ていた。
 テッドは衣服を整え、未だ心身の硬直が解けずにいるラズロに宣言する。
「二度目はないからな。…おい。なあ、聞いてる?」
 立ち直りの遅さにテッドが手を伸ばすと、そこでやっと反応を示して、ラズロの体がびくりと震えた。
 見返すは、恐怖に染まった青い瞳。

 ここに来て、全てを悟ったテッドは呆れた。
「あのな、気持ちは分かるが、おれ相手につまらない悪さはするな」
 ラズロの行動の動機、つまりは若気の至りという奴だった。
 テッドはおもむろに拳を固めた。そしてゲンコツ。
「いっ!」
 悲鳴はもちろんラズロだ。

「目、覚めたか?」
「…はい」
「じゃ、おれに言うことは?」
「スミマセンデシタ」
 冷ややかな視線にもはや土下座。
「よろしい」
 寝台の端と端で相対して、テッドは胡坐をかいて、改めて深いため息をついた。




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